凍結受精卵で妊娠成功 民間病院では青森県初(H15.2.25 陸奥新報より)

 

 

体外受精卵の胚盤胞を凍らせて保存、解凍して子宮に戻す凍結受精卵で、弘前市代官町のIVF佐藤祐子レディスクリニック(佐藤祐子院長)で不妊治療を受けた女性が妊娠に成功し、今春出産することがわかった。胚盤胞の凍結解凍後に妊娠、出産するケースは県内民間病院では初めてで、不妊に悩む夫婦には治療のすそ野が広がることになりそうだ。

 

同院によると、通常の体外受精は卵子と精子をシャーレ上で受精、細胞を分割させる。分割5日目で胚盤胞と呼ばれる状態となった受精卵を子宮に戻す。母体から採取する卵子は5、6個程度から多い人で30個ほどだが、子宮に戻す受精卵は2、3個。しかし、子宮に戻す以外の受精卵は保存できなかった。そのため一度の体外受精で妊娠に失敗した場合は改めて卵子を採取する必要があり、母体への負担となる。

 

このため子宮に戻した以外の受精卵をマイナス196度の液体窒素で凍結させることで保存可能となり、必要なときにこれを解凍・使用できる。一回の採卵で数度子宮に受精卵を戻す作業が可能となるほか、合併症や多胎予防、コスト低減につながる。また若い受精卵が使えるため、妊娠の確率が高まる。

 

国内では1989年に千葉県の病院で成功して以来、全国的に広まりつつある。本県では弘前大学付属病院産科婦人科で出産に至ったケースがある。

 

半日から一日かけて受精卵を凍結させる緩慢凍結法と30分程度で凍結させる急速凍結法があるが、同院では細胞破壊しにくい急速凍結法を採用。佐藤院長とエンブリオロジスト(人の卵を扱う臨床検査技師)の永井恵さんと斉藤美栄子さんの3人のスタッフで、結婚3年目の20代女性に昨年7月に処置を施し、妊娠に成功させた。

 

佐藤院長は「民間病院で凍結受精卵を扱うことで、患者の都合に合わせて処置ができる」と話している。

 

また弘大医学部付属病院産婦人科でも「県内の不妊治療のレベルアップにつながり、民間病院で治療できることで患者のすそ野が広がり良いことと思う」と語った。

 

 

 

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